🩸GodValley戦記 ― 営業編『血流大河』 第4話:最終面接②
営業面接が始まった。
面接官に「身に着けているものを営業して売れ」と言われる。
営業などやったことがない。
唯一の経験といえば、ホテルでの接客だ。
それは「与える仕事」。
営業は「奪い取る仕事」。
正反対の世界だ。
一枚のA4用紙に営業の流れが書かれていたが、
頭に残ったのは冒頭の一行だけだった。
――営業開始。
私「今年は特に寒いですね。」
面接官「そうですね。」
当たり障りのない会話の後、いよいよ本題へ。
私「本日お伺いしましたのは、こちらの腕時計をご紹介に参りました。」
面接官「ほう、なかなかおしゃれだね。値段は?」
私「30,000円です。」
条件は「値下げ禁止」。
額面そのままで売る。
それが面接官からの“ルール”だった。
そこからが本番だった。
「メタリックブルーの文字盤はこの年では派手じゃないか」
「もう腕時計は持っている」
「アナログよりデジタルが良い」
矢継ぎ早に飛んでくる否定の言葉。
一つひとつを受け流すしかない。
ただ、どんなに反論されても、心の奥に熱があった。
――営業とは、言葉で戦う戦場だ。
その瞬間、面接室の空気が変わった。
相手の表情、呼吸、声の抑揚。
そのすべてを読み取ろうとする「戦闘本能」が、静かに目を覚ました。
「まあ、いい時計というのは分かったけど、値段がな」
恐らく最強最後の敵が、静かに立ちはだかった。
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🕯️ 第5話
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