癌と言われても、
心のどこかで「まだ違うかもしれない」という希望は残っていた。
大学時代の教授が言っていた。
“癌と告げられたら、必ず別の病院でも診てもらえ” と。
実際、教授の親族は誤診で、
別の病院では「癌ではない」と判断されたらしい。
紹介状を持ってK大病院へ向かった。
診察は2週間後──混雑のためらしい。
初めての耳鼻科。
癌の診察だからか、医師が異様に多い。
開封できない紹介状には、相当な所見が書かれていたのだろう。
鼻からスコープを入れ、モニターに映し出される映像。
医師たちが群がり、低い声で言い合っている。
「これはあれだ……」
「……じゃないのか」
その光景を見て、私は悟った。
正式な告知はまだだが、
——“はい、がん確定”。
主治医と思しき医師が話し始めた。
「咽頭と食道に癌が見つかりました。
詳しいことは検査を受けてから」
これが正式な告知なのだろう。
レントゲン、心電図は当日。
CT、MRI、PET、生検は後日。
すべてが終わるまで約2週間。
受診から合わせると、約1ヶ月間、何の治療もできない。
癌は、その間にも進行する。
——本当にこれでいいのだろうか。
K大病院は京都一の医師と設備を誇る。
だが、時間がかかりすぎる。
他の病院なら、もっと早く動けたのかもしれない。
それでも私は賭けた。
K大病院に Bet した以上、最後まで付き合う。
腹を決めた。
📘 次の話
🕯️ 第5話
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